言葉に表現するということ

視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の五感の中で、野生の動物に比較し、人間は嗅覚が著しく衰えているという話から。その嗅覚を磨く事から始まる職業がある、という話をラジオで耳にしました。ワインのソムリエのことです。その道を目指す者は、日常生活において目に留まったモノの匂いを手当たり次第に嗅ぐ努力をし、「鼻を効かす」訓練をするらしいのですね。その上さらに難儀なのは、分別できた匂いを他者と「どこが」、「どう違い」、その匂いは「何の匂いか」、言葉にできなければならないということ。単種の匂いのみならず、複数種が混じった匂いを他者と嗅ぎ分けるだけでなく、それを第三者に伝えるために表現するということは、自身の経験に基づく豊富なボキャブラリーがあって初めて可能であると言えるのではないでしょうか。ソムリエは感性と知性を兼ね備えた、きわめて芸術的かつ職人的な職業と言えそうですね。「言葉に出来ないものは、無いと等しい」そんな風にも言えそうです。