情景
梅雨の時期になると思い出す情景があります。私は高校3年間を弓道部に在籍しておりました。県下でも有数の広い道場は、県大会が必ず催される程立派なものでしたし、部員の数も多い方だったと思います。練習が始まる前と終わった時の「黙想」の時間には、部員全員が正座し時間の流れに耳を澄ませます。
「矢道(やみち)の芝に降り注ぐ柔らかな雨」
「あちこちに鳴くアマガエルの低い喉」
「柔道場の畳に叩き付けられた大きな背中」
「跳ね挙げる水飛沫と、タイムを計るプール際のTシャツ」
一つ一つは淡々として、しかしその躍動感はまぶたの裏でシンクロします。そんな40年近く前の放課後の情景は、弓を引かなくなった今でもはっきりと思い出すことが出来ます。
雨上がりの自転車帰り道、梨園の緑がとても鮮やかでした。
梅雨の雨も心静かに良いものです。(S)
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